ここでは、この記事を読むだけで社会保険労務士の通信講座の全体像がわかるようにひとつの記事にまとめてみました。
社会保険労務士ってどんな資格?
ひとことで言えば、企業の人に関する専門家であり、労働・社会保険諸法令に関する法律を扱うただひとつの国家資格です。
具体的には、社会保険の加入手続や労働保険料の計算、賃金台帳作成や確定申告、労働契約や就業規則の作成などの仕事を通して、企業の労務管理に携わります。
企業と顧問契約を結び、独立開業することもできますし、企業の人事労務・総務などの部署で勤務社会保険労務士として仕事をすることもできます。
また、社会保険労務士の資格を取得後に、必要な研修を受け紛争解決手続代理業務試験に合格することで、「特定社会保険労務士」としての登録をすることができます。
特定社会保険労務士になると、近年増加し続けている、残業代の未払い問題、セクハラ・パワハラ問題、不当解雇問題など個別の労働紛争を、裁判を起こさずに解決するためのADR(裁判によらない紛争解決法)の代理人となることができるようになります。
社会保険労務士の試験はどんなもの?
試験日程と申し込み期間
社会保険労務士の試験は毎年8月下旬の日曜日に行われます。
受験申し込み期間はその年の4月下旬~5月末にする必要があります。
受験資格
社会保険労務士の試験には受験資格があります。
主なものとして以下のような要件があります。
※詳細は社会保険労務士試験オフィシャルサイトをご確認下さい
【学歴要件】
- 大学(短期大学を除く)において62単位以上を修得した者
- 短期大学又は高等専門学校を卒業した者
- 就業年限が2年以上で、かつ、課程の修了に必要な総授業時間数1,700時間以上の専修学校の専門課程を修了した者
【資格要件】
- 司法試験予備試験に合格した者
- 行政書士となる資格を有している者
このため、最終学歴が高卒の方の場合、一般的には受験資格のない行政書士資格を取った上で社会保険労務士を受験する場合が多いようです。
試験科目
試験科目は労働保険と社会保険の2つの分野から出題されます。
【労働保険】
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
【社会保険】
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
- 社会保険に関する一般常識
配点は一問一点で、選択式で40点、択一式で70点の合計110点満点です。
難易度
近年の合格率の推移は以下の通りです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成27年 | 40712名 | 1051名 | 2.6% |
平成28年 | 39972名 | 1770名 | 4.4% |
平成29年 | 38685名 | 2613名 | 6.8% |
平成30年 | 38427名 | 2413名 | 6.3% |
令和元年 | 38428名 | 2525名 | 6.6% |
令和2年 | 34845名 | 2237名 | 6.4% |
令和3年 | 37306名 | 2937名 | 7.9% |
令和4年 | 40633名 | 2134名 | 5.3% |
令和5年 | 42741名 | 2720名 | 6.4% |
令和6年 | 43174名 | 2974名 | 6.9% |
社会保険労務士試験の特徴は?
社会保険労務士の試験は全てマークシート式です。
また、出題内容は知識の有無を問う問題がほとんどであり、計算力や思考力を問う問題はほとんどありません。
したがって、いわゆる「暗記型」の試験に分類されるでしょう。
全科目満遍なく勉強する必要がある
社会保険労務士試験の難しさのひとつに、科目ごとに必要な最低点が定められていて、いわゆる「足切り」が存在することです。
よって得意科目でどんなに点を稼いでも、一科目でも必要最低点数を下回れば不合格となります。
全科目偏りなく勉強する必要がある配点の方式となっています。
なお、この必要最低点数はその年の各科目の正答率などにより変動します。
試験直後には各資格スクールが予想を出しますが、最終的には11月の合格発表までは合否は分からない試験と言えるでしょう。
社会保険労務士のおすすめ勉強法とは?
社会保険労務士試験は、受験者数の6割近くを社会人が占めており、働きながら受験勉強をして目指す方が多い試験です。
社会人であれば学習にあてられる時間は、せいぜい一日2~3時間といったところではないでしょうか。
一般的に社会保険労務士試験合格に必要な勉強時間は1000時間程度といわれており、一日平均3時間勉強しても333日かかることになります。
ところが実際には、一日に費やす学習時間は同じくらいでも、半年程度の学習で一発合格する方もいれば、合格に3~4年費やす方もいます。
やはり単純に時間をかければ良いというわけではなく、以下に戦略的・効率的に時間を使うかが合否を分けるといえるでしょう。
独学か資格スクールか
社会保険労務士試験は独学でも合格可能な試験です。
ただし、その場合、合格まである程度の年数がかかってしまう必要があることを覚悟する必要があります。
なぜならば、独学の場合、教材選び・学習進捗管理・試験傾向対策など合格に必要な全てを自分自身で手さぐりで模索しながら学習を進めていく必要があるからです。
したがって独学で社会保険労務士を目指すのであれば、最終的には合格できたとしても、短期間で効率良く資格を取得するということは困難でしょう。
やはり一発合格・短期合格を目指すのであれば、資格スクールの利用がおすすめです。
特に働きながら社会保険労務士試験の学習をするのであれば、通学での受講は難しい場合も多いでしょうから、通信講座での受講がさまざまな点で効率的です。
社会保険労務士には通信講座がおすすめの3つ理由
近年、社会保険労務士の通信講座はインターネットを活用することで、大きく進化を遂げています。
一昔前の通信講座といえば、問題集の赤点添削や、DVD講義をテレビで視聴するといったイメージでした。
しかし、今ではどの資格スクールでもWEBによる講義の受講ができますし、紙のテキストだけでなくスマホのアプリなどを利用した一問一答集が用意されていることもあります。
このようなインターネットを活用した通信講座には以下のような利点があります。
おすすめ理由① いつでもどこでも学習可能
WEBで通信講座の講義を受講できることで、それまではテレビかパソコンの前でしか受講できなかった視聴覚講義がスマホやタブレットなどでも気軽に受講できるようになりました。
通勤時間の電車の中などの学習も、テキストを読んだり、一問一答の問題集を解いたりするだけではなく、講義の受講にも当てることができ柔軟で効率的に学習をすすめることができます。
おすすめ理由② 重い教材を持ち運ぶ必要がない
テキスト・問題集なども、デジタル化されている講座も多いので、紙のものと併用して使用することで、重くて大きな教材を持ち歩かなくとも、ちょっとした空き時間などに確認が可能となるので、スキマ時間の有効活用につながります。
おすすめ理由③ コストパフォーマンスが良い
各資格スクールやコースによって通信講座の費用はさまざまですが、WEB通信講座の登場で、一昔前と比べると大分費用は下がりました。
WEB通信講座であれば、資格スクール側のコストも下がりますし、また、大手以外のスクールでも通信講座の開講が可能となり、競争原理が働くからです。
10万円を切るような通信講座も登場し、ほとんど独学と変わらない費用のものもあります。
ちなみに独学でも、きちんとした教材を揃えようと思うと5~6万円はかかります。
社会保険労務士の通信講座は何で比較する?
社会保険労務士の通信講座は数ありますが、比較すべきポイントは以下の通りです。
テキスト教材
WEB通信講座といっても、やはり学習の中心は紙のテキストです。
なぜならば、暗記型の社会保険労務士試験ではテキストは繰り返し眼を通し、自分の手で書き込みやライン引きなどしていくことで知識を定着させていく重要な役割があるからです。
テキスト選びで重要なことは「厚すぎるものを選ばないこと」です。
社会保険労務士試験合格に必要な知識は膨大なため、めったに試験に出ないような細かい論点まで完璧におさえていくことは事実上不可能です。
したがって思い切って試験に出やすい内容に絞った薄めのテキストを選択することが重要です。
テキストは資格スクールにより、フルカラー、2色刷り、白黒、市販のテキストの活用など、違いがあります。
資料請求でのサンプル取り寄せや、WEB上での確認ができますので、必ず自分の眼でチェックしましょう。
講義教材
視聴覚講義の質はWEB通信講座の肝の部分です。
テキストを読むのと並行して、目と耳を使った視聴覚講義を受講することで、テキストの理解や知識の定着の度合いは格段に高まります。
最近では教室講義をそのまま録画したような教材ではなく、通信講座用に録画した質の高いものがほとんどです。
講義の理解しやすさについては、講師との相性の部分もありますので、テキスト同様に資料請求でのサンプルDVD取り寄せや、WEB上講義動画を確認しましょう。
質問サポート体制
社会保険労務士試験の学習をすすめていく中で、必ず何回かは講義を聞いてもテキストを読んでも理解できない部分が出てくるはずです。
そんな時に役立つのが、質問サポート体制です。
通信講座用の場合は、メール・電話を中心として質問サポート体制を整えている場合が多いです。
また、資格スクールや選択したコースによっては質問できる回数に制限がある場合もありますので、しっかりチェックしておきましょう。
価格
社会保険労務士の通信講座の価格は、10万円を切るものから30万円を超えるものまでかなり開きがあります。
使用している教材の内容もさることながら、一般的には大手の受験予備校ほど価格が高く、WEB通信講座を中心としている資格スクールほど割安になります。
大手の受験予備校は全国に校舎を構えたり、TVCMを打ったり、講座作成そのもの以外の部分にかかるコストも大きくなるからです。
その点、WEB通信講座を中心としている資格スクールはそれらの経費がかからないため講座のクオリティを保った上でリーズナブルな価格を実現できているため人気が高まってきています。
もちろん知名度の高い大手の受験予備校には安心感もありますし、自習室が利用できたりといったメリットもありますので、そのようなものを重視する場合には選択する価値はあるでしょう。
参考: 社労士通信講座総合人気ランキング
社会保険労務士試験の学習の開始時期
社会保険労務士の学習を開始する時期は、1000時間程度という学習時間の目安を考えれば、理想的にいえば試験1年前の9月くらいからでしょう。
8月の社会保険労務士本試験の後であれば、その傾向をふまえて学習がスタートできますし、通信講座の翌年度向けのコースの募集も始まります。
また、この時期の通信講座は早期申し込み割引などのキャンペーンを行っていることも多く、比較的お得に受講できる場合もあります。
とはいえ、人生「思い立ったら吉日」ですから、社会保険労務士の資格を取ると決めたのであれば、いつであれその日からできることを始めるべきでしょう。
社会保険労務士の学習のスケジュールで気をつけるべきこと
社会保険労務士の学習スケジュールを立てる上での注意点としては、
「試験の1カ月前には試験範囲全体を一通り終わらせておくこと」
が挙げられます。
その理由は、まず第一に社会保険労務士試験の合格基準には科目ごとの必要最低点があるので、一科目でも不得意科目を作ってしまうと足切りの危険性があることです。
第二に試験直前期には、法改正対策や最新の厚生労働白書対策、また、模擬試験での本試験シュミレーションなど、その時期にしかできないことが多くあるからです。
もちろん、全ての試験科目を完璧にしておくことは難しいでしょうが、重要な論点でけでも、とにかく試験の全範囲を早めに終わらせておくことは重要です。
ちなみに、初回のテキスト読みの段階は、たいてい思った以上に時間がかかり、当初のスケジュールが狂いがちですので、しっかりと学習の進捗管理を行い、
「手つかずの範囲を残したまま、今年の試験は記念受験・・・」
ということがないようにしましょう。
社会保険労務士の通信講座をポイント別に比較!まとめ
社会保険労務士の資格をとった後に、実際に社会保険労務士として登録をして仕事をするには、2年以上の実務経験があるか、全国社会保険労務士連合会が主催する所定の研修を受ける必要があります。
しかし、その要件さえ満たしてしまえば、資格の維持要件などはなく、いつでも登録をして仕事を始めることができる一生ものの資格です。
また、どんな資格でもそうですが、本当のスタートは試験合格後であり、社会保険労務士の資格を自分の人生に活かしていくことがゴールです。
この記事を参考に、できるだけ効率の良い方法で、短期合格を目指してくださいね!